鶯の幼鳥がさえずりの練習を始める頃、美味しくなり始めるのが とり貝 です。
鮨屋のネタ箱に艶のある墨色の貝が並び始めると、毎年暖かな春の到来を感じます。ゆるやかに春の足音が近づいてくるようにとり貝も少しずつその旨味を増し、桜の咲く季節から新緑の5月にかけて旬を迎えてゆくのです。
とり貝の特徴は墨で一筆撫でたようなその色合いですが、この色素は手で触っただけで簡単に落ちてしまいます。貝の綺麗な色まで楽しんでもらえるよう色止めをしっかりできるかどうかも鮨屋の腕の見せ所なのです。
とり貝は春と秋に旬を迎え、それぞれ「春貝」「秋貝」と呼ばれますが、やわらかな食感と強い甘みといった繊細な味わいが楽しめる春貝は格別です。
ぜひ刺身や握りで、うららかな初春の風を感じてください。
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